奥多摩の自然と歴史

鳩ノ巣渓谷

地形/地質

 奥多摩は関東山地の東の端にあたる山地帯で、「東京の屋根」と呼ばれる雲取山を頂点にして、東にいくにつれて低くなっています。稜線部は、山腹や渓谷は河川の浸食によって傾斜が急になっており、壮年期地形と呼ばれる景観をしています。山塊は主に中生代に堆積した堆積岩で構成されていますが、硬さの異なった岩石が介在するために浸食の度合いが異なり、滝や渓谷の多い複雑な景観を見せています。また、石灰岩が広く分布し、日原・倉沢・小袖・養沢・大岳沢では鍾乳洞が見られます。

薄紫色のカタクリが咲いている写真

植物

 奥多摩は温暖で適潤な気候に恵まれており、冷温帯から暖温帯にかけての植物が多く分布しています。麓ではカシなどの常緑樹が見られますが、山の中腹までは主にコナラ・クリなどが二次林を形成しています。1000mを超えるとブナ・ミズナラなどの落葉広葉樹が広がるようになります。さらに標高が2000mを超える雲取山山頂付近ではコメツガやシラビソなどの亜高山性の林が主体となります。草花は標高や山域により様々ですが、カタクリ、ツツジやシャクナゲの仲間などの春の花、カエデ類の秋の紅葉が有名で、かなりの種数の植物が生育しています。奥多摩湖の周辺や日原谷一帯は、東京都水源かん養林となっており、水源地帯として重要な役割をもっています。

出展:「現在指定されている植物の一覧」(環境省)秩父多摩甲斐国立公園

藁の上でヤマネが丸くなって眠っている写真

動物

 奥多摩は植生が豊富なので、それに応じてとても多くの種類の動物が生息しています。中でもクマタカは奥多摩の生態系の頂点に立つ空の王者であり、奥多摩を象徴する鳥です。清流には生きている化石といわれるムカシトンボが中生代と変わらない姿で舞い、アゲハやシジミチョウの仲間が森や林の淵を飛び交います。また、哺乳類も数多く生息しており、天然記念物のヤマネやカモシカ、「森の妖精」と言われるオコジョなどもひっそりと暮らしています。これもひとえに奥多摩の懐の深さを物語っていると言えるでしょう。

御前山からの奥多摩湖の眺め

歴史

 縄文時代から人が暮らし、狩猟採集を中心とした生活社会がありました。江戸時代には焼畑耕作地や萱場が多く作られました。また江戸市中の拡張による需要増大のため、木材の伐出が盛んになり、いかだ乗りたちが一団となり多摩川を下る姿も見られたそうです。
 近代、1957年には小河内ダムが完成、奥多摩湖が都民の水源として誕生しました。1950年には、16番目の国立公園として秩父多摩国立公園が制定。その後、秩父多摩甲斐国立公園に改称し、現在に至ります。今でも、数多くの伝統芸能が継承され、無形民俗文化財として、国指定「鹿島踊」、都指定「獅子舞」や「車人形」などあります。一方、登山やサイクリング、釣りやキャンプなど様々なアウトドア活動が行われる観光地としても盛り上がりを見せています。

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