暖かい春を待つ生きもの達

冬には冬の楽しみがある!

普段は生きものたちがにぎやかな公園も、冬は多くの生きものが活動をやめじっとしているため、寂しくなっているのではないでしょうか?
 
冬は気温が低く、乾燥しているため生物にとっては過酷な環境です。そんな厳しい冬を耐え抜くため、昆虫などの小動物は木や石の隙間など温度や湿度の安定した場所でじっと春が来るのを待っています。
 
ここでは自然解説員が冬に区内の公園や河川敷などで調査を行い、見られた生き物たちを紹介しています。寒い冬は外に出たくない人も多いと思いますが、たまには冬の生きもの観察もいかがでしょうか?


野鳥

鳥類の中には寒い冬を乗り越えるために、季節によって生活場所を変えるものがいます。越冬のためにその場所に訪れ、春ごろに別の繁殖地へ渡る鳥を「冬鳥」と呼びます。また、年間を通して同じ地域で生活、繁殖する鳥を「留鳥」と呼びます。

オオバン
[ツル目クイナ科] 冬鳥 水辺

公園の池や河川で見られます。全身が黒色で、額とくちばしが白いのが特徴です。泳ぎが得意で、植物や水生生物などを食べます。外国の生息地の都市化により日本に移動してきているようで、観察される数が増えています。冬は群れを作って生活をします。

ヒドリガモ
[カモ目カモ科] 冬鳥 水辺

水辺のある公園や河川敷で見られます。ユーラシア大陸北部から日本に渡ってくる冬鳥で、海藻、昆虫のほかに、陸で葉や芽を引きちぎって食べます。アメリカヒドリという鳥との交雑が確認されています。

クイナ
[ツル目クイナ科] 冬鳥 草地

水辺のアシ原などで見られます。警戒心が強く普段は藪の中などで生活しているため、見つけにくい鳥です。歩くことに長けており、天敵に見つかっても飛ばないで走って逃げることもあります。夏は東北地方にいて、冬になると越冬のために関東地方以南に渡ってきます。

ツグミ
[スズメ目ヒタキ科] 冬鳥 草地

公園や河川敷など草地で見られます。
越冬中の虫やハゼノキ、カキの実を食べて、糞と共に種を落とすので、種の運び屋としても活躍している鳥です。日本より寒いシベリアから秋に群れで日本にやってきて冬を越し、春にはシベリアに帰っていきます。

マガモ
[カモ目カモ科] 冬鳥 水辺

水辺のある公園や河川敷で見られます。夜に活動してイネ科などの植物を食べます。マガモを改良、家禽にしたものをアヒルと呼び、更にマガモとアヒルを交雑した鳥がアイガモと呼ばれます。カモの仲間は交雑しやすく、カルガモとの交雑も確認されています。

ユリカモメ
[チドリ目カモメ科] 冬鳥 水辺

公園の水辺で見られます。冬は頭部が白色で頬に黒斑が入りますが、夏になると頭部が黒色になります。ユーラシア大陸北部から日本に渡ってくる冬鳥で、基本的に群れで活動します。主に水生昆虫や小魚などを食べます。東京都の鳥にも指定されています。

ウグイス
[スズメ目ウグイス科] 留鳥 草地

公園や河川敷の草地などで見られます。全身が茶褐色で、腹面辺りが薄い白色。春に「ホーホケキョ」という特徴的なさえずりが有名な鳥ですが、冬は笹などの茂みの中で「チャッチャッチャ」と鳴きます。

シジュウカラ
[スズメ目シジュウカラ科] 留鳥 樹上

公園や住宅地など区内で広く見られます。腹部にネクタイ状の黒い線が入るのが特徴です。冬は群れで行動するものもあり、その群れの中にはウグイスやツグミの仲間なども交じる事があります。夏は主に昆虫類を食べますが、冬は木の実などを食べる姿がよくみられます。

スズメ
[スズメ目ハタオリドリ科] 留鳥 樹上

公園や住宅地など区内で広く見られます。日本では見た事がない人がいないくらいとても身近な野鳥で、「チュンチュン」という鳴き声だけでもわかるほど有名な鳥です。しかし、近年は都市化に伴い、数を減らしているようです。

ハクセキレイ
[スズメ目セキレイ科] 留鳥 草地

公園や河川敷など草地で見られます。長い尾羽を上下に振りながら地面を足早に移動する姿が特徴的で、主に昆虫などを捕らえて食べます。近年、すみわけをしていたセグロセキレイなどの生息域にも進出しているようです。

ハシボソガラス
[スズメ目カラス科] 留鳥 草地

農耕地や公園など区内で広く見られます。雑食性で河川敷などに生息していますが、生ゴミなどのエサが豊富な都市部の環境に適応し、数を増やしていました。区内ではゴミを荒らされないよう、防鳥ネットや折り畳みのゴミ収集ボックスなどが導入されています。

ムクドリ
[スズメ目ムクドリ科] 留鳥 草地

公園や住宅地など区内で広く見られます。地面を歩きまわり昆虫やクモなどの小動物を食べます。基本的に群れで生活をしますが、夕方になると群れ同士が集合し、大きな群れになってねぐらに戻ります。更に冬は大群になります。

ヒヨドリ
[スズメ目ヒヨドリ科] 留鳥 樹上

公園や住宅地など区内で広く見られます。果実や花の蜜が好物で、くちばしに花粉を付けている姿も見かけます。昆虫や小動物、植物を食べますが、冬に実るセンダンやモチノキの実などは丸のみにし、離れた場所に糞と共に種を落とすので、植物の種を運ぶ重要な役割を持っています。

キジバト
[ハト目ハト科] 留鳥 草地

公園や住宅地など区内で広く見られます。「デデーポッポー」という特徴的な鳴き声の鳥なので、聴いたことがあるかもしれません。自然の多い環境で見られ、木の実や昆虫、貝なども食べます。冬は羽を膨らませて空気の層を作り、寒さをしのぎます。

カイツブリ
[カイツブリ目カイツブリ科] 留鳥 水辺

公園の池などで見られます。体が小さく、短い尾羽が特徴的な鳥です。潜水が上手く、魚や甲殻類、水生昆虫などを捕らえて食べます。繁殖期は縄張りを作ってつがいで生活しますが、冬は若鳥や成鳥などが集まって群れで生活することもあります。

カワウ
[カツオドリ目ウ科] 留鳥 水辺

公園の池や河川敷で見かけます。潜水して魚を捕るのが得意で、嘴の先は魚を取り逃さないように鉤状。さらに親指を含む全ての指の間に水かきがあり早く泳ぐことができます。魚などの水生生物を一日に約500g食べる大食漢。周囲にはそれだけの生物が棲んでいるんですね。

アオサギ
[ペリカン目サギ科] 留鳥 水辺

公園の池や河川敷で見かけます。体が大きく、長いくちばしと長い脚が特徴的な鳥です。浅瀬を歩いて移動し、待ち伏せをして水中の魚やカニ、カエルなども捕らえて食べます。

カワセミ
[ブッポウソウ目カワセミ科] 留鳥 水辺

公園の池などの水辺の周辺で見られます。光沢のある青緑色、胸とお腹が赤褐色の鳥です。獲物を見つけると水中に飛び込んで捕らえます。営巣地が川の土手のため、護岸のコンクリート化などで個体数が減っていましたが、現在は生息数が回復しています。


両生類

両生類は自分で熱を作ることができない変温動物です。温度の安定していることも大事ですが、乾燥にも非常に弱いため冬越しの場所の湿度はとても重要です。

アズマヒキガエル
[無尾目ヒキガエル科] 地表

公園の丸太やシートの下など暗く湿った場所でみられますヒキガエルは陸上で暮らすカエルで、冬季は温度が安定し、湿り気のある場所を探して冬越しします2月終わり頃が繁殖期で、水辺へ集まり紐状の卵塊を産みます


爬虫類

爬虫類も共に自分で熱を作ることができない変温動物です。気温によって体温が変化する動物のため、温度の安定した場所で冬眠し、暖かい春が来るのを待ちます。

ミシシッピアカミミガメ
[カメ目ヌマガメ科] 水辺

冬は池の底でじっとしていることが多いですが、天気がよく暖かい日は冬でも池のほとりで甲羅干ししていることがあります。アメリカ南部原産の外来生物で、植物や水生生物などなんでも食べる雑食性です。日本の生態系への影響が大きいことから外来生物法での規制が検討されています。

ニホンヤモリ
[有鱗目ヤモリ科] 樹上

公園の木の隙間など狭い隙間などで見られます冬季はじっとして動きませんが、暖かくなると夜に活動し、街灯などに集まったガなどの虫を食べます。指に生えた細かい毛が吸盤の役割を果たし、ガラスのようなツルツルの面でも張り付くことができます。


昆虫など

暖かい季節にはたくさん見られた昆虫たちも、冬にはあまり姿が見られなくなります。しかし、土の中や壁の隙間などに隠れたり、姿形を変えて寒さに耐えたりしているだけで、実は身近な環境でも見つけることができます。

ナミテントウ
[甲虫目テントウムシ科] 草地

プレートの裏や木の隙間などで集団越冬している姿が見られます。冬でも暖かい日は活動することもあります。本種は模様が多様で、100種以上のパターンがあると言われています。幼虫も成虫も肉食で春になるとアブラムシを食べる姿を見かけるようになります。

ウラギンシジミ
[チョウ目シジミチョウ科] 樹上

成虫のまま越冬し、気温の変化が少なく雨の当たらない常緑樹の葉の裏側で過ごします。名前の通り翅を閉じると銀色なのが特徴です。春になるとクズやフジの花芽や新芽などに産卵します。

イラガの仲間(繭)
[チョウ目イラガ科] 樹上

公園や街路樹の木の枝で見られます。白と茶色の模様の入った硬い繭の中には前蛹が入っており、春に成虫が出てきます。成虫は小型~中型の蛾で、口が退化して何も食べません。幼虫には毒のあるトゲがあり注意が必要です。

クビキリギス
[バッタ目キリギリス科] 草地

落ち葉や枯れ草の隙間で見られます。体は細長く頭頂が三角形に尖っており、口の周りの色が赤いのが特徴的です。イネ科の植物や昆虫などを食べる雑食性の昆虫です。成虫のまま越冬するので、春先の暖かい夜に鳴くこともあります。

ゴマダラチョウ(幼虫)
[チョウ目タテハチョウ科] 地中

河川敷などに生える大きなエノキの落ち葉で見られます幼虫は背中に3対の突起あるのが特徴的で、エノキの葉を食べて成長します。幼虫の姿で越冬し、春に活動を再開し、成虫になります。成虫は白と黒の斑模様が特徴です。

オオカマキリ(卵鞘)
[カマキリ目カマキリ科] 草地

公園や河川敷などのの植物の茎や枝で見られます。カマキリの卵(卵鞘)は種類によって形が異なり、オオカマキリは大きくて丸いことが特徴です。卵は春ごろに孵化し、1cmほどの幼虫が生まれます。

アオズムカデ
[オオムカデ目オオムカデ科] 地中

公園の落ち葉の下などの暗く湿った場所で見られます。頭が青いのが特徴的なムカデで、脚は42本あります。冬眠中はあまり活動しませんが、暖かくなると夜に活動し、ゴキブリやクモなどを捕らえて食べます。牙には毒があるため注意が必要です。